一般的に『個人事業主の所得が年間900万円以上になるようなら、株式会社を設立して法人成りしたほうがお得』なんて言われるもの(法人成り=個人事業主が事業を株式会社化すること)。
この背景には年間所得が900万円以上になると所得税+住民税の税率が43%にもなってしまうので、株式会社化して法人税を払ったほうがいろいろとお得だろう…そういうことなのだと思います。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
事実、法人税率は地方法人税や住民税をあわせても最高で37%程度。それを考えると確かにその主張には一理ありますよね。
法人成りするデメリットについて:
しかし、今まではそれでも法人成りする必要性を私はまったく感じてこなかったため、一般的に法人成りしたほうがお得だよ…と言われる所得を超えていても個人事業主のままでした。
法人税率の実効税率は35%程度であるということと、自分への役員報酬で給与所得控除が受けられることは確かにメリットがありそうなんですが、これからあげるデメリットを考慮すると、決してお得でもないんじゃないかと思うのです。
そこで今回は個人的に思う、法人成りのデメリットを5つほどあげてみました。
税理士は仕事柄、絶対に法人成りしたほうがお得だと言ってきますが、法人成りには下記のようなデメリットもあるということをしっかり考慮した上で、検討してみてくださいね。
1.法人設立には30万円弱かかる
まず、株式会社を設立するためには、どんなに安く見積もったとしても25万円以上の費用がかかります。
これを司法書士や税理士などを経由して依頼をすると40万円程度になってしまう場合などもあるので、意外と馬鹿にできない負担と言えます。
また、登記に関する書類作成&提出などの事務的な手間が個人事業主よりも発生するのも、見えない法人成りのコストですね。
定款や就業規則を作るのも結構たいへんです。
2.税理士への支払いが増える
2番目としては税理士への支払いが増えるという点。
最近では安いところも出てきていると思いますが、私の事業規模だと決算を含めて年間50万円程度の負担は必要になってくるので、法人成りするとこれだけ出費が増える計算になります。
もちろんこの費用は1年だけ払えばOKというものではなく、法人の経営が続く限り毎年払わなくてはいけないもの。
更に税理士がTKCや勘定奉行などをソフトを指定してくると、負担は更にアップしてしまうことでしょう。
税務調査時にも負担:
加えて税務調査などが入る場合には、税理士に同席してもらう必要性が出てくるので、この費用負担も忘れずに。
その点、個人事業主だと税務調査時でも自力で対応することが出来ますが、法人格だとそうもいきません。
- 法人成りした後の税務調査:税理士に同席してもらうのがベスト
- 個人事業主の税務調査:自分1人でも対応可能
これらの費用も法人成りのデメリットだと捉えておく必要があります。
3.記帳作業が一気に難しくなる
株式会社にすると記帳作業が難しくなるという点もデメリット。
個人事業主だと自力でもどうにか記帳&確定申告が出来るものなんですが、法人ではそうはいきません。
税理士事務所に記帳を丸投げすれば年間36万円以上の負担、経理担当を雇うなどすると更に負担は増えます。
- 個人事業:自分で経理作業が可能
- 株式会社:決算作業に税理士の力が必要
法人成りの際は予め予算に組み込んでおくと良いでしょう。
4.法人住民税は意外と高い
法人住民税もボディーブローのように地味に高いです。
小さい規模の事業者でも年額7万円の負担は必要なので、これを毎年払い続けるのは負担増ですね。
実質的に事業をやめて、会社にお金を残した状態にした場合でも当然のようにかかり続けるのも負担です。
5.法人にお金を残してどうするのか?
最後がこれ、法人にお金を残してどうするのか…という点です。
確かに法人税率のほうが所得税率よりも安い魅力はありますが、法人にお金を残してどういう意味があるのか、これが私にはよくわからないんですよね(子供に事業継承させるなら別)。
- 子供にお金を残したい:法人化したほうがいい
- お金を残す相手がいない:法人化に意味はある?
「いやいや、そうじゃなくて会社に残したお金は、毎年、少しずつ給与を出して無くせばいいじゃないか?」という話も税理士からはよくされますが、2~4の費用が毎年のようにかかるため、株式会社を維持するのもタダではありません。
それで節税できる金額って一体どのくらいなのでしょうか?ここが疑問なのです。
株式会社を解散させた場合でも税金はかかる:
また、会社を解散させればいいじゃないか?という議論もありますが、解散であろうがなかろうが、個人がなんらかの利益を得た場合には所得税がかかります。
更にこの場合には、
- 会社が利益を出す
- 法人税を払う
- 会社にお金が残る
- 会社を解散させて法人名義のお金を個人のものにする
- 所得税がかかる
という行程になるわけですが、法人税を払ったあとの税引き後利益に対してまた所得税がかかるという非常に悲しい状況になるわけですよね。
いくら法人税率が所得税率よりも低いといっても、二重に課税されてしまうようであれば意味がありません。
法人化へ心はなびいている:
…と、ここまで法人成りのデメリットをまとめてみたわけですが、なぜ今回、こんなデメリットまとめを作ってみようかなと思ったのかというと、正直、私自身が法人化へ心がなびいているためです。
個人事業主を作ってから早10年以上。
ずっと法人にする意味はないと思って経営をしてきましたが、消費税が10%になったこと、そして法人税率が引き下げられることを契機に、そろそろ法人にしても良いのかなとも思っています。
特に消費税が2年間も免税になるのは大きいんですよね。
消費税がこのまま10%に引き上げられるのであれば、そのタイミングで法人成りしてしまうのも有りなのかもしれません。さてさて、どうするべきか、もう少し考えてみたいと思います。
以上、法人成りすることの5つのデメリットまとめ!個人的には個人事業を株式会社化することが節税になるのか、疑問で仕方ありません…という話題でした。
参考リンク:
個人事業主のままで運営を続ける意向の方は、記帳や経理作業が劇的にラクになる下記記事も併せてご覧ください。従来の作業時間が半分以下に減るはずですよ。