仕事で稼いだお金には所得税がかかることは、みなさんご存知の通り。
そしてこの所得税は、社会科の授業で習ったように累進課税制度というものが採用されているので、収入が増えていけばいくほど税率が高くなる仕組みとなっています。
では2022年現在の税率はどのくらいなのか、それは下記の表を参考に。
実際にはこの税率に住民税の10%を加えた数字が正確な税率に近い数値になるので、まぁ結構お金を取られてるものなんですよ。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
税金、恐るべしです。
所得税の累進性に対する不満:
控除額があるので表記より少ない税率に:
この際、『へぇ、所得4,000万円だと45%も所得税が引かれるのか!』と思うなかれ。
所得税を計算する際には右側にある控除額を考慮した金額になるので、仮に所得4,000万円ちょうどだった場合の税金は33%程度になります。これに住民税を加えても43%という税率なので、稼ぎの半分が税金で持っていかれるわけではありません。
ただ、念のため一応書いておきますが、控除額というのは割引ボーナスみたいなものでは決してなくて、たとえば所得3999万円の人が4000万円になったら200万円の税金割引があるわけではないので注意。
控除額はあくまで所得税金額を計算するのを楽にするだけの数字なので、控除額はどちらかというと「計算補助」に近いものですよ。
- 間違い:控除額は税金の割引
- 正解:控除額は税率計算を補助するためだけのもの
実際にはお得でもなんでもないのです。
累進課税制度とフリーランスは相性が悪い:
…と、ここからが本題。あくまで私の持論にすぎませんが、この累進課税制度とフリーランスってすこぶる相性が悪いと思うんですよね。
理由は単純、フリーランスって『今、現時点で自分にいくら所得があるのか?』をだいたい把握できるため。
たとえば現在、900万円の所得を稼いでいたとする。そうするとその後に受注する仕事は上記表の通り、33%+10%=43%の税金がかかるようになります。
こう書くと、控除の金額を考えると税率は43%もない…って言う方は多いんですが、それはあくまでそこまでの所得に対する話であって、すでに900万円稼いでいでしまっている方は、その後、43%の税率で仕事を受注しつづけなくてはいけなくなるわけです。
- 900万円未満の部分:税率43%未満
- 900万円以上の部分:税率43%以上
これ、いくら年間を通して平べったく考えれば税率はもっと低いと言われても、これから受注する内容はすべて43%かと思うと、結構ツラいもの。
なにせ43%といえばざっくり稼ぎの半分ですからね。生活に困っていないのであれば、『別にこれ以上は働かなくてもいっか…』と仕事意欲が著しく低下していってしまうことでしょう。
所得1,800万円を超えると更に悲惨:
更に仮に1,800万円の所得をすでに稼いでいる場合には、どんな受注もすべて50%の税率を払わなくてはいけない形に。
3万円の仕事を貰っても手取りは1万5000円、50万円の受注をしても25万円が税金になるので、『もう今年は働かなくてもいいかな、税金高いし…』と、よほど美味しい仕事でもなければ受注する気がなくなってしまうかもしれません。
- 100万円のデザイン案件受注:50万円が税金になってしまう
- 50万円の執筆依頼を受注:25万円が税金になってしまう*1
まさにお国のために働いているようなものです(苦笑)
売上が急上昇した場合は間に合わない:
だったら法人化して給与制にすればいいじゃないかとか、節税を頑張って税率を下げればいいじゃないか…って議論もありますが、フリーランスが年初に想定もしなかったようなお金を稼げてしまった時には法人化も節税も間に合わないので、こういう問題に直面する可能性大。
- 毎年稼げている人:法人化などの対策を取りやすい
- いきなり稼げてしまった場合:法人化や節税は間に合わない
まぁ『フリーランス=仕事をするかどうかを自由に選べる職業』だからこその、累進制の問題点なのかもしれませんね。仕事意欲を落とすという意味では、専業主婦の103万の壁に近いとも言えそうです。
以上、所得税の累進制とフリーランスはすこぶる相性が悪い…という話でした。今後、自宅で働くフリーランスは増加傾向にあるはずなので、私を含め、フリーランスが年間を通して意欲的に仕事ができるような、税制を整備してほしいなと思います。
参考リンク:
フリーランスや個人商店主などの個人事業主が節税に使える共済や控除については下記記事を参考に。
あと、せっかくなので節税をもっと勉強したいという方は参考書籍も読んでみてくださいね。知識が付けば、納めなくてもいい税金を減らすことが出来ますよ。
*1:実際には経費がかかるとは思うのでこんなに簡単にざっくり半分が税金として取られてしまうわけではありませんが、稼ぎの50%に税金がかかる感覚としてはこんな感じのイメージになるかと思います。