「外車販売で年商3億5,000万円の社長!」とか、「タラバガニの通販サイトで年商1億円!」とか、そういったニュースがあふれている新聞、テレビ、雑誌などのメディア。
そんな報道やニュースを真に受けて、『おぉ、この社長さん1億円も稼いでいるのか!若いのに凄い!』なんて思ってる方があまりにも多いので、今回は年収と年商の違いについて記事を書いてみたいと思います。
テレビや新聞に踊らされたくない方は是非、この違いをしっかり理解してニュース記事をお読みください。
年収と年商の違いについて:
年収と年商って違うんですよ:
まず前述の通り、年収と年商の違いを良くわかっていない方ってほんと多い。わかりやすく説明するために、10年近く前に話題になった記事を例にしてみます。
記事によると元AKB48の社長さんは年商1億円の若手注目株。ランボルギーニを買うために、車庫付きの一軒家を建築中だそうです。
株式会社アンティミンスを経営している川崎希さん(25)。独学で経営を学び、会社設立後わずか3年で年商1億円を突破した敏腕美人社長だ。
会社の事業規模も書かれていたので引用します(2013年時点の情報)。
- 【会社名】株式会社アンティミンス
- 【起業年】2010年
- 【社員数】20名
- 【年商】1億円
年商だけで年収はわからない:
この、会社設立3年で年商1億円の企業を作った…っていう数字だけを見ると、超稼いでいて凄い!とか、どんなセレブだ…って印象を持つ方がいますが、実は彼女が儲けているかどうかはわかりません。
なにせ、年商1億円というのは商品やサービスなどを販売した1年間の合計金額(売上)に過ぎないため。
もしかしたら利益が1億円あるかもしれませんし、場合によっては大幅に赤字がある可能性だってあります。
- 年商:サービスや商品などを販売した売上合計のこと。年商=年間売上高。
- 年収:実際に自分がもらった儲けのこと。賃金・給与などと同義語
要するに年商だけで社長の給料まではわからないってこと。年商が多い=高年収ではないのです。
社員20名だと経営は厳しいと思われる:
ただ年商1億円で社員数が20名となると、かなり厳しい経営である可能性大。
仮に社員1人に対して年間300万円の賃金を払っている場合には、それだけで6,000万円の出費ですからね。
- 年商:1億円
- 社員の給与:20名×30名で6,000万円?
更に材料費、宣伝費、事務所家賃、接待交際費などを差し引いたら、どのくらい手元に残るか言うまでもなし。
それゆえ、元AKB48の女性社長が手にできる役員報酬は限りなく低いのではないでしょうか。たぶん貰っていたとしても年収500~800万円程度であると想像します。
年商3億円ある外車販売業の社長も儲けは不明:
同様にテレビによく出てくる『高級外車の販売で年商3億円』という社長さんも、売上が3億円あるっていうだけで年収は不明。
もしかすると年収にして2,000~3,000万円を荒稼ぎしているかもしれませんし、1億円を販売しても利益が1円も出ずに年収ゼロの可能性だってありますよ。
加えて高級車は1台売れば500~1,000万円前後する商品。
- 1,000万円の車を月1台販売:年商1.2億円
- 1,000万円の車を月2台販売:年商2.4億円
- 1,000万円の車を月3台販売:年商3.6億円
月に2~3台を売れば年商3億円の社長さんの出来上がり…なので、比較的カンタンに年商3億円の社長さんになれる事情もありそうです。
問題はメディアの報道の仕方:
ここまでで年商と年収の違いはご理解いただいたかと思いますが、この話の中で私が問題視したいのは、元AKB48の社長のほうではなくメディアの煽り方のほう。
確かに年収と年商では、年商のほうを記載したほうが金額が多くてメディア受けが良いのかもしれませんが、年商10億円でも年収300万円くらいの社長さんがいることを考えると印象操作なのかな…と思ってしまいます。
- すごく見える:元AKB48の社長が年商1億円
- あまり凄くない:元AKB48の社長が年収500万円
もちろん間違った報道をしているわけではないので、正しいといえば正しいんですけれどもね…。
対策としてはメディアを見ている側である私達が、年商の大きさだけに惑わされないようにするしかありません*1。
年商だけならセブン-イレブンオーナーも大富豪:
ちなみに。
このメディアの報道方法でいうと、セブン-イレブンとフランチャイズ契約をしている店舗オーナーは誰しもが大富豪。
なぜならセブン-イレブンの1日あたりの売上は平均70万円あるので、1年365日で考えると1店舗あたり平均2億5,000万円の売上があるためです。
- 1店舗経営:年商2億5,000万円の社長さん
- 2店舗経営:年商5億円の社長さん
- 3店舗経営:年商7億5,000万円の社長さん
しかし、セブン-イレブンの経営者がみんなお金持ちかといえばそんなことは全くなし。
中には年収にして1,000万円以上稼いでいる敏腕社長もいるかもしれませんが、ほとんどの方が寝る間も惜しんで仕事をして、年間数百万~500万円程度を稼ぐのがやっとなのではないでしょうか?
いかに年商の大きさには意味がないか…ということが、おわかりいただけるものと思います(セブン-イレブンを4店舗も経営すれば年商10億円の社長サンですが、年収はせいぜい1,000~1,500万くらいしかない可能性が高い)。
年商と売上高の違いは?
年商と売上高の違いを調べている方も多いですが、基本的に年商と売上高には全く同じ言葉。
そのため、年商1億円のIT企業社長みたいな方がテレビに出たら、ああ、月800万くらいの売上がある会社の社長サンなのね…というくらいに思っておけば問題ありません(1億の売上高÷12ヶ月=800万の月間売上)。
あと、月商や日商という言葉もありますが、こちらもそれぞれ月間売上高、1日の売上高です。
- 年商:年間の売上高
- 月商:月間の売上高
- 日商:1日の売上高
年商と考え方は一緒なので、それが月間や1日になっただけと考えてくださいね。
年商と年収の違いを理解しよう:
こんな風にメディアが使う『年商』という言葉には、くれぐれも注意。
年商がいくら10億円あったとしても年収が多いとは限らないので、お金持ちかどうかは原則、年収でのみ判断するようにしてください。
- 年商が大きい:お金持ちかどうかはわからない
- 年収が大きい:お金持ちで間違いなし
年商は所詮、仕入れや人件費を考慮していない売上高でしかありませんよ*2
以上、あえて新聞やテレビが使い分ける、年収と年商の違いについて。あなたは年商金額の大きさだけで、お金持ちかどうかの判断をしてませんか…という話題でした。
参考リンク:
年商と年収の違いだけではなく、他にももっとお金の勉強をしたい方は下記記事もあわせてどうぞ。お金に強くなれば、もっと賢くお金を貯められるようになりますよ。